演技性パーソナリティ障害は10種類あるパーソナリティ障害のうちの一つです。
特徴
演技性パーソナリティ障害の方は、周囲の関心を引くために、嘘をつく、過剰なリアクションをする、性的に誘惑する、などの行動をとります。
他人の評価が低いことに耐えられずにこのような行動をします。
魅了したがる一方、周囲に流されやすい
他者や周囲の影響を受けやすく、流行に簡単に流されます。物事にすぐに飽きてしまう傾向をしており、新しいものを常に追い求めています。短絡的な思考をしており簡単に満足できることに興味を持ちます。
被暗示性が高いことも特徴の一つです。他者に服従してしまうことがあったり、自分の嘘が真実であると思い込んでしまうこともあります。
また、他人に対して事実以上に親密だと思い込む傾向があります。非常に人を信用しやすく、自分を助けてくれる人を盲信することもあります。しかし人間関係も飽きやすく、仕事や友人、恋人を頻繁に変えてしまいます。
そして異性を性的に誘惑することに熱心です。愛があるわけではなく、相手を魅了することで自分の評価を確かめたいと思っています。結婚相手や同性に対しては淡泊で表面的な付き合いをしますが、不倫相手などの異性に対しては積極的に行動します。
ステータスを好み、嘘をつく
演技性パーソナリティの方は多くの場合虚言症を伴います。虚言症では自分を実際以上に魅力があるように嘘を話すことがあります。 例えば有名人や権力者とまるで知り合いであるかのように話して興味を引いたり、学歴を詐称してステータスを誇示したりします。 妄想を事実であるかのように語り、ひどいときには本人もその妄想を真実であると思い込んでしまいます。
高い知性を伴う場合は権力を好む上昇志向の人物と捉えられることもあります。一方で短絡的な思考のため手段を選ばず詐欺などの犯罪に手を出すこともあります。この傾向は反社会性パーソナリティを持つ人のほうが強く表れます。
診断基準
以下の8つのうち、5つ以上を満たすと演技性パーソナリティ障害と診断されます。
- 自分が注目の的になっていないと楽しくない
- 不適切なほどの誘惑的、挑発的である性的な行動がある
- 浅く単純な感情が表に出ており、それがコロコロ変わる
- 身体的な特徴で注目を引こうとする
- 印象的だが中身のない話し方をする
- 芝居がかったオーバーな表現を行う
- その場の雰囲気や流行に影響されやすい
- 他者を実際以上に親密とみなす
分類
反社会性・境界性・自己愛性と同じく「劇場型」のパーソナリティ障害に分類されます。
それぞれのタイプとの違いは下記のとおりです。
- 反社会性に比べて感情的な表現を多く用いる。
- 境界性に比べて自分を悪い人間だと思うことが少なく、自分を傷つけることが少ない。
- 自己愛性に比べてナルシシズムは薄い。他人を支配しようとしない。
割合
男性より女性にやや多いとされています。全人口の2~3%が演技性パーソナリティ障害を有していると考えられています。
原因
パーソナリティ障害は複合的な要因から形成されており、そのうちの一つが幼少期に自己愛が傷ついたためと考えられています。
演技性パーソナリティ障害では、他人からの評価や愛情をどんな手段をとってでも集めます。 そのことにより傷ついた自己愛を回復しようとしているのではないでしょうか。
接し方
演技性パーソナリティ障害の方の嘘を指摘してはいけません。
それを行うと怒りの矛先はあなたへ向き、あなたと当人の関係が悪化するばかりでなく、周囲にあなたの悪評を嘘や過剰な表現を交えて広められてしまうでしょう。
それにより、周囲からのあなたへの評価、あるいは演技性パーソナリティ障害の方の評価のどちらかが下がってしまいます。
演技性パーソナリティ障害の方と話すときは、嘘ではなく真実に着目するとよいでしょう。 もし悲劇的にふるまっているのであれば真実の部分にのみ共感や同情をするようにします。 嘘の部分に関しては肯定も否定もしないほうが得策です。
当人はあなたを騙そうという意思ではなく関心を持ってほしいと思っていることに注意してください。
治し方
演技性パーソナリティ障害の方は他人に依存することが多く、自分の考えがあまりなかったり、自分の本当の感情に気づいていなかったりします。そのためカウンセリング等によって自分の感情を理解することが治療の第一歩となります。
さいごに
情報を盛ったり嘘をついたりして注目を集める行為というのは日常的によくあることです。
例えば場を盛り上げたり周りを笑わせるためにピエロのような行為を取ることは皆経験があるでしょう。
また、TwitterなどのSNSツールにおいても注目を集めるための嘘が散見されます。
匿名であるということ、情報が拡散しやすいというSNSの特性からこのような行為が多くみられることは自然なことでしょう。これ自体はパーソナリティ障害と呼ぶほどのものではなく、ツールを上手に活用しているという利点とも考えられます。
近年は情報にあふれており、表面的な情報を集めるだけならば非常に簡単になりました。
いかに表面上を綺麗に見せることができるか、というのは近年では重要な能力なのかもしれません。そういった意味では演技性のパーソナリティは優位に働く可能性があります。障害となる短所を克服できれば自然と魅力的な人物になることでしょう。
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